2015年4月27日 の記事から

入れ歯の講演会に参加し後で考えたこと。

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義歯(入れ歯)の勉強会にあまり参加しなくなっていたのは、おそらく歯を失った後の事を考えても医学的に考えるとそれは歯科医師の敗北ではないかと考えていたからかもしれません。

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歯科医師という職業は、お口の中に何か物をいれることによりお金を稼いでいるわけでこれを望んでいる人が果たしているのだろうかと考えるとそれは明白に違うと思うのです。


日本医師会のドンと言われた故武見会長は、歯科医師の事をなにやら冒涜する言葉を使い中医協での歯科医師の立場を殆ど無視していたようだったのです。


それは医師だけでなく普通の方の見方であり、病気を治すというより何か物を入れてお金をふんだくる商売人のような見方をしていたからではないかと考えられます。


ですが、医療性を持つ補綴物(差し歯や入れ歯)を考えるとやはりある程度難しいことでもあると現在は思っています。


そしてやがて口腔科という医師としての自覚を持てば、歯を削るという行為が傷害行為でありあまりすべきことではないというスタンスになります。


だからこそ虫歯という病気を完全に除去して再発させないようにしなければなりませんし、運悪く神経を抜かなければならないようになっていたとしても、抜かないで何とか神経を落ち着かせ痛みを止め、ある程度の時間をかけても神経を取らずに虫歯を治癒させる方法を取るべきではないか考えています。(注射をせずに慎重に虫歯をとるという行為、擦り取るような行為、無理をせずに鎮静させるセメントを使い半年後に再チャレンジして完全な除去をさせる)


そしてそれはある程度可能です。

だからこそ虫歯の取り残しによる進行した歯髄炎(歯がしみる、痛い)が怖いのです。


時間との関係もあるし、保険の評価がほぼないという健康保険上の問題もありますが、医師と考えれば虫歯を再発させるのは能力が無いと考えてもいいのです。


最近、金属が取れたとか詰め物が取れたという患者さんをみてまず疑うのは、虫歯というばい菌の取り残しなのです。


そして歯周病という病気に対しても殆どの人が罹患しているのにも関わらず検査も治療も受けていない事を憂います。


医療として歯周病を考えると、患者さんにただ磨いてくださいでは情けないというしかありません。ある程度正確な検査をして治療方針をたて説得することが必要です。


そして歯の数が少なくなればなる程、プラークコントロールといいまして病気の原因物質を除去するのが難しくなるのです。


だから、虫歯でもそして元に戻らない骨の吸収をきたす歯周病でも、ブラシによる効果的な方法をマスターさせないと大変なん事になるという事を理解させ、効果的な方法をやらせ続けさせることこそ大事なのです。


だからこれを自覚させてやらせる説得の技術こそが歯科医師の能力であるとさえ思われるのです。


人を説得することの難しさを痛感いたします。


と同時に医師が手放し、やることがなくなった口腔や顔面の病気の治療、骨折や急性外傷、のう胞摘出、奇形、唇顎口蓋裂(みつ口)舌痛症、顎不全症、口腔外科を専攻した方ならば悪性腫瘍なども除去したりしているわけですから、それに近い行為もできるような歯科医師を作り出せば、歯科の医師ではなく口腔科の医師として認識させるのではないかと思ってしまうのです。


こうなるとやはり医学部で教育を受けた人間が歯科をさらに専攻して、口腔科になるしかないような気もしますが、現実的には医学部を卒業して口腔外科を専攻する医師はいないようですから、歯科医師がなるしかないようです。


ヨーロッパでも以前は口腔科という科を専攻する医師もいたようですが、日本と同じように現在は殆どいないようです。

ですから日本では歯科医師が口腔外科を専攻しているのですが、問題は歯科一般への興味がないのかできないのか全てを網羅する能力を持つ方が少ないという事実です。


歯科医師から口腔科の医師へとパラダイム変換をできなければ、世間から評価されることは無いような気がしています。


病気を治すことこそ医師の務めでありその他の事は付属品に近いのですから。